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(声明)「天皇メッセージ」は違憲! 世襲制「国体」なんてまっぴらです

 7月13日、NHKが天皇の「生前退位」の意向を間接情報として流した。そして8月8日、なぜ「生前退位」であるのかを縷々述べる天皇のビデオメッセージが、各TV局によって流され、新聞各紙が大きく報じた。それは周到に準備され、「玉音放送」とも表現されるようなものであった。その後も、この天皇「生前退位」問題はメディアを賑わせている。

 憲法には、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負う」(三条)、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行い、国政に関する権能を有しない」(四条)とある。その憲法下で、天皇はメディアを介して直接「国民」に語りかけた。

 その手続きを無視した天皇の行為の違憲性については、すでに批判が上がっている。また、「生前退位」の意向や、「天皇のあり方」など、メッセージの内容も憲法皇室典範の変更を迫るもので、明白な政治への介入であり、違憲行為であるとの批判もすでに出ている。私たちも、こういった状況に女性と天皇制の問題を考えてきた視点から批判を加えていきたい。

 私たちはこの「天皇メッセージ」に、世襲制「国体」護持への天皇の強い意志を感じた。そして、家父長制・家制度を唯一残す天皇家の家長が、この国の家長であるかのように動き出した状況に驚愕した。家業の運営や家督をいつ譲るかは家長が決める、と言わんばかりに国政に口を出したのだから。

 思い出してみよう。2004年、男系男子による皇位継承が危ういとの判断で、「女性天皇」容認のための「皇室典範に関する有識者会議」が小泉首相(当時)のもとで発足した。しかし2007年、秋篠宮家に男子が産まれ、有識者会議の報告書は白紙に戻された。また2011年、宮内庁が出した、このままでは皇族不在の危機という「緊急課題」に対して、野田政権(当時)は翌年、「女性宮家」創設のための「皇室典範改正へむけた論点整理」を発表し、同年、安倍が首相に返り咲いて「白紙」宣言した。そして今年4月、「女性宮家」創設を検討する有識者会議発足の噂も流れたが進展の気配は見えない。

 この10年の流れをみれば、この「天皇メッセージ」は、政府主導では早期の「皇室典範」見直しはのぞめないという判断の結果ではなかったのか。

 昭和天皇は、「国体護持」のために終戦を遅らせ、敗戦後も「国体護持」のために沖縄を米国に売り渡し安保条約に繋がる「メッセージ」を発した。いま同様に、明仁天皇も「国体護持」のために動いている。立憲主義を踏みにじり、象徴天皇制を再定義し、その明文化を求めるメッセージを発することで。その「再定義」には、メッセージにはなかった「安定的な皇位継承」のための「女性宮家」、あるいは「女性天皇」の容認なども含まれてくるだろう。皇位継承と皇族維持は「国体」にとって最重要課題なのだ。

 女系を認めてでも「万世一系」の「伝統」を守りたいと考える者たちと、男系こそが「伝統」だという者たちの確執など、私たちには関係ない。ただ、この国の憲法・法律が定める制度である以上、人権主義や民主主義、立憲主義の立場から声を発していくしかない。

 また、「女性宮家」や「女性天皇」の容認は、男女平等や女性活躍に寄与するように見えるが、世襲制は女に子どもを産ませることで成立し、出自による差別を是認する制度であることにかわりはない。問題は世襲制や家父長制・家制度を法体系に残し、女性の身体を制度の道具とし、差別を是認し再生産していることである。そして、それを「伝統」とする天皇を、「日本国と日本国民統合の象徴」としていることだ。

 制度の廃止によって、私たちだけでなく、天皇一族も解放される。私たちは天皇が訴える「生前退位」を介した象徴天皇制の再定義=「国体護持」を拒否し、天皇制廃止を求めていきたい。

 

2016年8月31日

女性と天皇制研究会