(報告)ジェンダーと天皇制 第2回「女性皇族の行方」

講座の第2回は「女性皇族の行方」、レポーターは女天研の近藤和子さんでした。2016年4月20日(水)、文京区民センターにて開催。

議論の素材として4つのエピソード群、①「女性にとって最も大切なのは子どもを二人以上産むこと」発言、②「Princess Masako」、③『皇后考』と『古代東アジアの女帝』、④皇室典範の改正問題:皇統の危機、を小テーマにそれぞれ豊富な資料をもとにレポーターが紹介した。
 国による人口政策の問題と皇后や皇太子妃への「世継ぎ」重圧の問題、その皇后の象徴天皇制における役割など、沢山のエピソードを聴いていくうちに何となくそれぞれの問題がつながっていく。そして、「女性天皇」や「女系天皇」、あるいは「女性宮家」容認のための皇室典範「改正」問題が浮き沈みする状況から、現在の政府見解、「男系による皇位継承の安定的維持を可能とする方策について、あらゆる観点から検討する」という方針を紹介。国連女性差別撤廃委員会が出そうとした「皇室典範」の「男系男子による継承」規定を女性差別であるとする勧告案に、日本政府が「差別ではなく伝統」と開き直ったクレームを出して勧告から削除させた件も、ホットな情報として出された。
 大皿に山盛りという感じに提示されたエピソード群から、男系継承、天皇制維持のための女性宮家女性天皇容認問題、この女性宮家女性天皇容認で一歩前進と考えられそうな「常識」をどう考えるか、このような言論が日本社会のジェンダー意識にどのように関係していくのか、というところを論点にして議論開始。
 皇位継承のあり方について政府の見解が女帝や女性宮家容認でないとすれば、どんなものが出ているのかという意見から若干の意見交換。明確には出されていないが、右派から実際に出ている案には旧宮家復活論や養子縁組などがあることを紹介し、それらは家制度や家父長制復活しかイメージできず、会場はウンザリ。世界の王族は継承者問題で消滅していくのだが、とレポーター。
 さらに、皇后を始めとする女性皇族について、慰問や慰霊など慈愛の象徴、優しく暖かいというイメージを作り出しているが、それはかなり浸透しているのでは、という意見。また、それは女性皇族だけでなく、天皇一族の役割がそうであり、そういう意味では天皇制自体がジェンダー的には女性的な役割を帯びているという意見。そういった天皇制社会における女性皇族のメディア報道、さらにその女性皇族の言動に対する一般的な反応の恣意的な報道、という状況全体は、社会全体に影響を及ぼさざる得ないだろう、という意見。そういったことは、天皇制を使うためにあるいは延命させるために戦略的になされているのではないか、という意見。議論は少しずつ展開した。
 また、家族モデルとしての天皇一家という役割はいまも生きているのか、という議論もなかなか面白かった。現天皇が皇太子時代に結婚したときの新しい家族モデルというイメージは、現在的には追いかけようもない幻のような家族ではないか、という意見や、それでもそれを規範とするような風潮はあるのではないか、という意見。むしろ崩壊しかかっているかにみえる現在の皇太子一家がより現実の家族の苦悩に近くてシンパシーを持つ人がいて、そういう意味でも家族モデルとしての天皇制は難しいのではないか、という意見。まったく自分たちとは違う存在(権威の人)を求め、そういう人に慰められたいという欲求が社会的に大きくあり、だから特別の家族としてみているという意見。最後に、天皇家を家族モデルとされるのが一般的であるとしたら、皇位継承権が女性にもあるという方向に持って行った方が、ジェンダーの問題としては一歩前進という論も成立するけどどう? という問いかけが出た。それに対して、天皇制維持には反対だけど男性だけというのはおかしいということも言い続けたいし、天皇家の女性たちが病気になるようなひどい状況をなくしていきたいと思う、という意見。しかし、それは天皇制をなくさないかぎりなくならない…。実に沢山のことを議論しあった。
 議論全体を結論的にまとめられたわけではないが、出された視点はどれも見落とせない。次回以降にも活かしていきたい。(桜井大子)

連続講座・ジェンダーと天皇制4/20(水)第2回「女性皇族の行方」

女天研連続講座「ジェンダー天皇制」

あらためてあたりを見回せば、この社会は「あたりまえ」「普通」「常識」という規範に縛られている。性をめぐってもしかり。姓をめぐっても、生をめぐっても!そこに天皇制は関係していないだろうか。「日本人」の心性に関わっていないだろうか。そこに天皇家をめぐる報道は影響していないだろうか。この講座ではケーススタディをとおして、その問題に迫っていきたい。レポートをもとに参加者との議論をとおして、少しでもその「規範」からの解放にむけた糸口を探していきたい。

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第2回「女性皇族の行方」

「女性にとって最も大切なのは子どもを2人以上産むこと」⁉ 皇室の女性は「男の世継ぎ」を産むことが求められます。X・Yデ―が近づくなか、皇室の将来は? 国連の男系継承批判で再燃した「女性宮家」と「女性・女系天皇」問題。考えてみます。

 

レポート|近藤和子(女天研)

日時|4月20日(水)19:00~21:00

会場|文京区民センター3C(文京区本郷4-15-14 都営三田線大江戸線「春日」駅直結。東京メトロ丸ノ内線南北線「後楽園」駅4bまたは5出口より徒歩6分)

地図|http://www.city.bunkyo.lg.jp/gmap/detail.php?id=1754

参加費|500円

主催|女性と天皇制研究会

連絡先|jotenken[あっと]yahoo.co.jp

 

 

連続講座・ジェンダーと天皇制2/24(水)第1回「憲法と皇室典範」

女天研連続講座「ジェンダー天皇制」はじまります!

あらためてあたりを見回せば、この社会は「あたりまえ」「普通」「常識」という規範に縛られている。性をめぐってもしかり。姓をめぐっても、生をめぐっても!そこに天皇制は関係していないだろうか。「日本人」の心性に関わっていないだろうか。そこに天皇家をめぐる報道は影響していないだろうか。この講座ではケーススタディをとおして、その問題に迫っていきたい。レポートをもとに参加者との議論をとおして、少しでもその「規範」からの解放にむけた糸口を探していきたい。

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第1回「憲法皇室典範

まずは天皇制という制度について、基本的な課題を共有する回を準備中です。できるだけ「ジェンダー天皇制」という課題に引きつけた内容で議論できるようにレポートを準備したいと考えています。ぜひご参加ください。

 

レポート|桜井大子

日時|2月24日(水)19:00~21:00

会場|アカデミー茗台学習室 A(地下鉄丸ノ内線茗荷谷」徒歩10分。春日通りを後楽園方面へ。茗台中学校併設。都バス02系統「小石川四丁目」バス停徒歩3分)

地図|http://www.city.bunkyo.lg.jp/gmap/detail.php?id=1995

参加費|500円

主催|女性と天皇制研究会

連絡先|jotenken[あっと]yahoo.co.jp

 

 

【連続講座】7/15wed 反逆の女たちに出逢いなおす 吉田隆子

女性と天皇制研究会連続講座・反逆の女たちに出逢いなおす
第11回「吉田隆子」(1910~1956)
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恋愛、音楽、芸術運動を自由闊達・奔放に求め、作曲家として舞台音楽やオペラを手がけ、タクトを振った女性。彼女は天皇制下の戦時体制にあらがい、弾圧されながらも、時代や風潮に流されることを拒み、反戦ファシズムを生き、民衆音楽を指向した。そんなふうに戦中・戦後の短い人生を走り抜けた、作曲家・吉田隆子を小林緑さんが語る。

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私たちは先端技術の恩恵と弊害、富裕と貧困、排外主義と国際化、戦争と平和、さまざまな矛盾にゆれる現代に生きる。その現代を形づくった近・現代の過程で、その社会に挑み、生き、死んでいった「女」たちがいた。沢山の言葉や生き様を残した叛逆の「女」たち。私たちは時代を遡り、残された彼女たちの言葉と記録をよりどころに、私たち自身の感性で、再度、彼女たちに出逢いなおしたい。現在を生きるために。

 


お話:小林緑さん(国立音楽大学名誉教授/女性と音楽研究フォーラム前代表)
日時:7月15日(水)19:00~20:45
場所:アカデミー音羽 多目的ホール有楽町線・「護国寺」駅出口1 徒歩2分)
地図:http://www.city.bunkyo.lg.jp/gmap/detail.php?id=1993
主催:女性と天皇制研究会
問い合わせ:jotenken[あっと]yahoo.co.jp
資料代:500円